理事長挨拶(福島英沖)
JEMEA(日本電磁波エネルギー応用学会)が2006年8月に発足してから14年が経過
し、学会主催のシンポジウム、研究会、各種イベントが数多く開催されてきまし
た。歴代理事長も5人目となり、今までのアカデミックからではなく、今回初め
ての民間企業出身(2020.3まで豊田中央研究所に在籍)となります。
マイクロ波加熱は食品を中心とした電子レンジとともに発展してきましたが、こ
こ10年をみると目覚ましい進化を遂げており、工業用マイクロ波応用技術が各方
面で数多く紹介されています。今まで、マイクロ波は単なる熱による反応と思っ
ていた人も多かったですが、ここ数年でマイクロ波の非熱的効果(特異効果)の
実証例が着実に増えてきています。また、均一加熱とスケールアップが課題でし
たが、マイクロ波化学の分野では大規模な事業化が図られています。さらに、新
たな技術革新により従来のマグネトロンから半導体発振器に置き換わる動きがあ
り、マイクロ波技術の信頼性と量産性が一気に高まる機運があります。
JEMEAでは機関誌が2015年12月、査読付き論文誌が2017年6月に発行され、昨年
(2019年)学会誌としてJ-STAGEに公開されました。機関誌・論文誌がJ-STAGEに
掲載されたことにより、JEMEAの活動が領域を超えて日本のみならず、世界各国
の研究者にも認知されるようになってきました。他の歴史ある学会と同様に、
JEMEAの社会的信用度や学術的価値をより高めるためには、日本学術会議(協力
学術研究団体)への新規加入が必要となります。
マイクロ波技術は処理時間を大幅に短縮させ、生産性を革新的に向上させる手法
として期待されています。従来から用いられているゴムの加硫、木材や耐火物の
乾燥、食品の加熱・解凍などから、新たな応用分野としてマイクロ波化学、新規
材料創製・プロセス技術、医療応用、ワイヤレス電力伝送、自動車を含めた環境
エネルギー分野まで、マイクロ波、電磁波の適用範囲が拡がってきています。
現在、新型コロナウイルスの影響で大変な時期ですが、収束後は全く新しい生活
スタイル、産業構造になると言われています。まさに、歴史的な転換期を迎えよ
うとしており、JEMEAとしてもマイクロ波、電磁波を使って革新的な研究開発を
実現させるチャンスと捉えてます。これからも引き続き会員の皆さまとともに、
JEMEAの活動を一層充実させ、さらに発展させていきたいと考えています。
令和2年5月26日
日本電磁波エネルギー応用学会 理事長
福島 英沖 (FUKUSHIMA Hideoki)
名古屋大学 未来材料・システム研究所 客員教授

日本電磁波エネルギー応用学会 理事長 福島 英沖